色覚異常についてもっと知ってください その14

就職する

 私は大学院修了見込みとなり、職を探すことになりました。以前はかなり多くの職種で色覚異常者不可となっていたそうですが、最近は色覚制限が相当に緩和され、直接人命にかかわる職種(警察官、パイロット等)を除いてはあまり色覚制限はないようです。

 また、色覚制限のある場合でも、「パネルD-15テストをクリアできる程度の軽度の異常の場合は可」となっているものがずいぶんと多くなりました。これは色弱の方々には朗報ですね。しかし私は色盲でパネルD-15テストをクリアできないので、とにかく少しでも色に関係ある職業はすべてスッパリと諦めました。

 実は、私は電子工作を趣味としていたこともあって、電気関係の職業を考えていたことがありました。電気関係では、プラスは赤、マイナスは黒で配線するのですが、私の目では赤と黒の判別が難しいときがあります。また、抵抗器のカラーコードは全く読めません。趣味でやるときはプラスは黄色、マイナスは黒で配線するなど独自の工夫で何とかなりますが、仕事でやる場合はそのようなことは許されません。それで、電気関係の就職も諦めました。

 就職に当たってのもうひとつの大きな問題は、私が運転免許を持っていないことでした。「色覚異常についてもっと知ってください その10」に書いたように、信号機や前車のブレーキランプや赤い標識等が非常に見づらく、運転は危険と判断したために一度取った運転免許を失効させてしまいました。そのため、「要普免」の職はすべて候補から外さなければなりませんでした。もちろん、運転免許を失効させたことを後悔はしませんでした。「要普免」ということは仕事上で車を運転しなければならず、したがって就職後に色覚を理由に運転を拒否することはできないことは分かっていたからです。したがって、「要普免」でない職を探さなければなりませんでした。

 理科系大学院修了なので、メーカー勤務も考えましたが、多くのメーカーは工場等が郊外にあり、車でないと通勤できそうにないところが多かったです。バスで通勤できそうなところもあるにはありましたが、残業などで帰りが遅くなったときに足がなくなってしまう恐れがありました。

 そこでですが、理論物理学を専攻したので、色覚に関係ありそうな理科教員ではなく、代わりに数学の教員になることを思いつきました。数学教員になるには色覚も運転免許も関係ありません。ところが、そこでもやはり問題が生じました。求人のある学校がやたら田舎に偏っており、車がないと生活できないようなところが多かったのです。都市部の学校を丹念に探しましたが結局見つからず、田舎ではあるが鉄道の通っている小さな町の私立の学校の数学教師に応募し、何とか拾ってもらうことができました。メーカーの工場とは異なり、学校の場合はいかに田舎にあろうとも生徒が通学できる範囲内に立地していますので、これなら自分でも最悪自転車通勤すれば何とかなると考えたのです。

 就職先の学校まで歩いて行けるところにアパートを借り、普段は徒歩と自転車、遠出するときは鉄道(バスは事実上ないに等しい田舎なので)という生活が始まりました。赴任してまず電気製品を揃えなければなりませんでしたが、鉄道で近くの大きな町まで行き、そこの電気店で購入してすべて配達してもらいました。机や食器棚の類は自転車でかなり遠くのホームセンターまで行って買いましたが、ホームセンターでのトラック貸出を利用することができず、ものすごく大きな食器棚を自転車の後ろに積み、長い道を自転車を押して持って帰ってきたのを覚えています。

(その15に続く)